ふと

以前の事を思い出していた。
おいどんは若い頃は瞬間湯沸かし器と呼ばれていて、ちょっとつつくと直ぐに真っ赤になって爆発する。
おいどんの技術力は認めるが、人間性は認めない。これでは人の上には立てない・・なんて言われてた。
久しぶりに思い出したよ。もう随分前の懐かしい話になった。

そうだなあ、辞表を持って上司に抗議してたからなあ。
何があっても怖くなかった。職を失う事も恐れなかった。全てを賭けて生きていた、そんな時代だった。
でも、爆発したのはただの一度だけ。
上司のそのまた上司との意見の食い違いから、おお争いになった。夜通し言い争って、翌日辞表を提出。
上司が「バカな事するな!」「お前はエースなんだから、こんなつまらない事で人生を捨てるんじゃない!」
でも懲りずに人事に直接退職届を出したおいどん。
結局上司が取り返してきたんだけど。
本当に色んな人にお世話になって、面倒をかけた会社生活だったなあ。

おいどんが切れたのはこの一度だけ。
信じてやってきた事を全て否定された。そんなレベルの低い事やるんじゃないよ!
そう、おいどんの実績のあらゆるところを否定された。

そうなんだ。おいどんはおいどんのレベルで一生懸命やって、これ以上やりようが無いって所まで頑張った事に対して、いとも簡単に否定された。
お前のレベルでこんな事を偉そうに言うな。もっと出来るはずだ。足もとばかり見てるんじゃ無いよ!
悔しかったんだ。
おいどんが一生懸命やった事が、上司から見れば、まだ半分程度の仕事しか出来てない。実力はまだまだ高いはず。
一生懸命やって実績をあげたと言う事と、上司の考えるおいどんの能力のギャップが大きく、問題を解決したここらでお褒めの言葉を頂きたかったところで”まだまだや”と叱られた。
で、器量の小さかったおいどんはプッツンしてしまった。褒めて欲しい。とりあえず此処までご苦労さんと言って欲しかった。
お前の目指すところはこんなところじゃない。現状で満足するんじゃないよ!
そう、これで、褒められると確信していたところで、非力をずばり指摘されて、自分の力不足を逆に正当化して逃げ道に使ってしまった。
これじゃあ、お互いに反する方向、口論も治まるところもなし。

今にして思えば、すごい上司の上司だったよなあ。スタッフのおいどんを見つけてからは、以後は平社員と、上の上の上司との勝負だからなあ。
たぶん、徹底的においどんを信じた上での口論だったんだろう。こいつは骨があると信じた上での事だったのだろう。おいどんの方がまだそこまで自覚できていなかっただけ。

ただ一度の大喧嘩。
本当に皆さん、ご迷惑おかけしました。ご心配かけました。
いまはいい思い出ですよ。あそこまで徹底的に争えた事は、今の大きな自信になっています。
後で、こっそり家に来て頂いた時の事忘れません。もてなす酒もなく、内職の部品が散らばってる部屋でしたが、”おまえは成長した”と言われた事をとても嬉しく思いました。
”以前は、技術力はNO1だけど気持ちがまだ未熟だった。今は良くなったよ。メンバーからの信頼も厚いし、リーダーにふさわしくなったよ”
最高の評価をもらって、凄く感激ししました。そしていろいろ気遣って頂いてありがたいことでした。

そう、おいどんがまだ若かりし頃のスタッフ時代の出来事。
ただ一度だけ辞表を準備した時の出来事でした。